もう一人の私と出会って

もう一人に私と出会って

自己主張の強い娘との対立

2児(17歳女子、15歳男子)の母 Mさん

私はお母さんを信用してないよ

「私は、お母さんを信用してないよ。今まで非行に走らなかったことは、自分でも偉いなって思うし、そうならないように育ててもらったことは感謝してるけど、お母さんは、私の気持ちがどんなんか、なんにも知らないやろ。私はお母さんに何にも話してないもん。私にとって安心できるのは弟だけやもん。私も弟の気持ちは良く分かるし、弟かて私のこと、良く知ってるよ」

年を増す毎に辛辣な母親批判をするようになった娘から、こんな言葉が投げつけられました。自己主張の強い娘と精一杯ぶつかり合い、娘も親の価値観を理解し、基本的なところでは安心できるように育ったと思っていた矢先の言葉でした。

「何で私がお母さんに話さへんか考えたことある? 今までそんなことも気づかへんかったでしょ。お母さんて、いつでもそうや。普通の親なら子供の様子を見て、いつもと違うな、何かあったんかなって、すぐ分かるよ。でも、お母さんは子供から言わへんかったら気づかないやろ。頭痛いときだって、しんどいから寝てるときだって『何してるの、さっさとしなさい!』と、言うだけやし、子供から『頭痛いねん』って言われて『そしたら寝ときなさい』っていう調子やし。そんなん母親と違うわ。いくら仕事が忙しくても、もうすこし様子から感じたらいいのに」

 

今まで真剣に向かい合ってきたと思っていましたが、心が通じていたのではなく、親の権威で押えつけていただけだったのです。このことを痛烈に知らされました。たしかに、仕事をしながらぎりぎりの時間のなかでの子育てには、充分ゆとりがあったとはいえません。子育てが楽しいと感じるよりは、どうしたら仕事と両立できるかが第一の課題でもありました。

「自分でも気づかなかった自分」が見えてきた

  しばらくして、私は子育ての学びの場の学習会に参加することにしました。学習会が進むにつれ、なぜ娘の言葉に腹がたつのか理解できましたし、「育児が疲れる」のは、そう感じざるを得ないような言動を自分からぶつけているからだということも見えてきました。また、娘の気持ちを思いやることよりも、自分の都合を優先して話しかけていたことにも気づきました。親はよかれと思ってしていたことでしたが、娘にとっては、諦めに近い気持ちで受け入れるしかないことも多かったようです。

こうして『自分でも気づかなかった自分』が見え出してきました。子育ての学びの場のリーダーからは

「今からでも充分間に合う。知り得たときが始まりだから」

と励まされました。

娘との問題が起こるたび、「この問題は誰の問題なのか」を考えるようになりました。が、言葉や理論でその筋道が見えてきたからといって、閉ざされていた心がすぐさま開かれるものではありません。

「お母さんが子育てを勉強して努力しているのは分かるけど、私はその通りにはなりませんからね」

娘は、反発してきました。

「自然な結末の体験」が待てない!

毎朝、起こされないと起きてこない娘に、自分の責任で起きるよう任せてみたら、という提案を受けて、「よし、やってみよう」と決心しました。

1日目、6時30分になっても起きてきません。6時45分、7時・・・。

「早く起きないと遅刻するよ」

と言葉をかけそうになる気持ちを押さえつつ待ちました。

いらいら、はらはらする不安。苦しいものです。

「早く起きなさい!」

と、言えたらどんなにほっとすることでしょう。でも、それが娘の自立を妨げることになるのです。

しかし、ついに声をかけてしまいました。2日目も、声をかけました。3日、4日と日は経ちます。でも、どうしても、待つことができないのです。

 

明日は、学習会があるという日。なんと時間が気にならないのです。自分で自分の気持ちの変化にびっくりしました。あわてふためいて7時15分にとび起きた娘。牛乳を飲んだだけで

「ごはん食べてる暇ないわ!」

と、とび出して行く娘の後ろ姿に

「気をつけて行きよ」

と、やさしい言葉をかけていました。

とても不思議な平穏な気持ちでした。いらいらすることも、はらはらすることもなく、娘も起こされなかったことに不満をもつ訳でもなく、とても素直な態度でした。穏やかな気持ちで相手に接することがコミュニケーションの基本なのだと、実感できました。

自分から話しかけて来るようになった娘

子育ての学びの場の学習会に参加して早3ヵ月。ややもすれば 子育ての学びの場・STEP勇気づけセミナーで学んだことが頭から離れて、

「しまった!」

と、反省することしきりですが、見えてきた『自分でも気づかなかった自分』の存在が、感情的になることを押さえています。

このことが今までと違った言葉づかいや態度に表れているのでしょう。

「親なんか信用してない」

と反発していた娘も、学校のことや友達のことなど、自分から話しかけてくるようになりました。進学を控え、進路の選択や将来についてなど、話し合わなければならない題材があったことも幸いしました。

娘との会話が増えたなと感じるようになったある日のことです。娘が私の側にきて、こう言いました。

「お母さん、私、大学は人間関係のほうに進もうかな。そうしたら、お母さんの仕事に役に立つかも知れないし、私かて力になれるもんね。前に、『お母さんなんか信用してない』って言ったけど、ほんまは信用してるねんよ。私かて反発して甘えたかったんやろな」

娘は、自分の気持ちが整理できたことを知らせたかったのでしょう。

 

娘とのトラプルは本当に辛いものでした。けれど、今こうして穏やかな気持ちで話し合い、娘の心の内を知ると、今まで親の得手勝手な言動にもまれながら、娘のほうがよほど冷静に物事を解決しているのが分かります。私も今、始まったばかりです。日々、失敗を繰り返し

ながらも、途中、とだえることのないよう、ゆるやかでも前向きに成長できるよう、心していきたいと思っています。